ビジネスマンが中国古典を読むなら「管子」がおすすめ
一年ちょっと前に母校のビジネススクールにて「論語」をテーマに集まったセミナーに参加しました。
そこでふと思ったのですが、大体ビジネスマンに向けて出ている古典といえば、
①論語
②孫子
③韓非子
④老子・荘子
あたりじゃないかなと思うのですが、古代最高の経営者である管仲が書いた(の言葉が編纂された)「管子」って中々出てこないなぁと。
書物として、そんなメジャーじゃないからだと思うのですが、実はとても内容が良く、なおかつ一番ビジネス書に近いと思っているので、ご紹介をさせていただきたいと思います。
といっても私も菅子を初めて読んだのが2015年だったのですが、その時に大変感銘を受けました。
相変わらずマニアックなブログですが、少しだけおつきあいください。
■そもそも中国古典の思想とは?
中国の思想の基盤は、紀元前500年~紀元前200年の春秋戦国時代に諸子百家と呼ばれる多士多彩な人々の思想がベースになっているかと思います。
もちろん後の時代にも古典的な名著、例えば「貞観政要」、「菜根譚」などあるかと思いますが、ベースはやっぱり諸子百家の時代だと思います。
代表的な思想家と、どのようなことを主張していたのかは下記にまとめました。
■なぜ中国古典を読むの?
これはあくまで個人的な意見ですが
一言でいえば、変わらない「人間観」を養う為
ではないかと思っています。
現在はVUCAの時代と言われていて、不確実性が高く予測がしずらいと言われていますが、予測しづらい時代だからこそ実は「変わらない」ものに対する洞察が重要になってくるのではないかと思うのです。
古典とは時代を越えて読み継がれているもので、そこに「変わらない」ものが担保されていると思います。
■管子とは何?
管仲という人は、「史記」の列伝の主人公にもなっていて、諸葛亮(孔明)が模範として尊敬していた人だと知られている人です。
斉という国を、宰相として手腕を振るって豊かにして、周王朝の元で主君である桓公を覇者にして(※日本でいう征夷大将軍のようなもの)諸侯を統率して異民族の侵略を防ぎ平和をもたらしました。(このことを尊王攘夷といいます)
管仲は、現代でいうところのプロ経営者みたいなもので、オーナーである斉王室から経営を委託されて、大きな実績をあげました。
元々は斉の桓公とは敵対派閥に与していた管仲は、度量は広いものの我儘な君主のボスマネジメントに苦労していました。
「管子」は管仲による言行録に、多少春秋戦国時代に管仲の名を借りて、付け加えがされていると思われる作品です。
多くの思想家から批判を浴びる作品だけど、個人的には最もバランスがとれていて、現実を直視しながら物事を成し遂げてきた人だけが語れる言葉の数々がとても印象的でした。
特に管仲の人間洞察の鋭さと、そしてその裏側にある人に対する「やさしさ」、幻想に逃げないリアリズムには脱帽です。
管仲の思想の一部は、商鞅など法家の思想に引き継がれ、やがて秦による初めての中華帝国の成立につながったといわれています。
(キングダムの世界!)
有名な言葉は下記のようなものでしょうか。
「倉廩(そうりん)満ちて礼節を知り、衣食足りて栄辱(えいじょく)を知る。」
食料が豊かになって初めて人は人に気遣いができるようになり、生活に余裕ができて外聞や恥などを気にするようになる。
「君、君たらざれば、臣、臣足らず」
君主の責務を果たさずに、部下から報われようと思っても、それは不可能だ。
「ゆえに与うるの取りたるを知るは、政の宝なり」
(※税など)取ろうとするならまずは与えなさい。これこそ政治の秘訣です。
「一年の計は穀を植えるのしくはなく、十年の計は木を植えるにしくはなく、終身の計は人を植えるにしくはなし」
一年で収穫を得たいなら穀物を植えることだ。10年先を考えるなら樹木を植えることだ。終身の計をたてるなら人を育てることだ。
個人的には「史記」や管仲が出てくる小説や伝記などではわからなかった管仲像が、「管子」を読むことでよくわかったのがとてもよかったです。
「管子」には思想だけでなく、実際に管仲がどのような行動を行ったのかがいくつか紹介されているのですが、経済と人間のことをよくわかっている人だと感じるエピソードが多かったです。
■気になる講座
以前受けたセミナーは、今度卒業生向けに開講されるみたい。
「管子」は残念ながら入っていないようです。。。
哲学がテーマなら、たしかに「論語」かな。
渋沢栄一の事例もあるし。
マニアックなエントリーを最後まで読んでいただいた方に感謝申し上げます。