【感想】最近話題の本「ティール組織」読みました。

最近話題の「ティール組織」読みました。

書評など出てますね。

eliesbook.co.jp

 


読んだ感想の結論としては、とても読みにくい本だけど、とても素晴らしい内容の本でした。
革新的な内容で、人に希望と示唆を与えてくれます。

現代では組織に所属している限り、権力構造の中で皆心が傷ついたりどうにもならないストレスを抱えて働くことも多いですが、ティールでは信頼関係を育みピラミッド階層ではない組織で、個々人が自分の能力や価値観を最大限発揮できる環境を生み出します。
人類が生み出してきた組織モデルを論じるところから始まり、サピエンス全史を思わせるようなオープニングです。

※本をもとに作成

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■「ティール組織」の素晴らしいところ
私が考えるこの本の素晴らしいところは下記です。

①一見するとあまりにも楽天的で理想主義、しかし実はVUCAと言われ変化が早く情報革命がおきた現代社会には合理的な内容。
②マネジメントイノベーションの指南書となりうる本。
③とてもハートウォーミングな内容で人がもっと活き活きと働ける可能性を示してくれている。
④リーダーシップ研究の先端を行く本
⑤優れた事例により裏付けされている。
⑥不都合な事実に触れている。


一見するととても理想主義で、青臭い書生論のように聞こえてしまう内容ですが、現代の環境変化を考えた際にはとても合理的と思えます。
現在のVUCAと呼ばれる時代では、経営者が1人で意思決定する難易度がどんどん上がっていると思っています。
テクノロジーや環境変化について感度が高くなくては、変化に対応するのは難しいですし、何より最も情報を持っている顧客接点のあるフロントラインと経営者との間には情報のギャップやタイムラグが介在していて、現代の環境変化スピードに意思決定のスピードが合わなくなっています。
従来の解決策としてはエンパワーメント(権限移譲)や、最近ですとリンダ・ヒル教授が提唱する逆転型ピラミッドによる逆転のリーダーシップとなりますが、ティールの内容はそこから踏み込んだ形となっています。
これまでの組織論の延長というより、非連続の変化だと思いますし、著書の中でも何度かでていたゲイリー・ハメル教授が提唱しているイノベーションの階層構造でいうところの、経営のイノベーション(マネジメントイノベーション)に該当する大きな変化だと思います。
著書で多く取り上げられている事例としては、オランダのビュートゾルフや、欧州のFAVIなどですが、(他、モーニングスター、AESなども多いがすべてが網羅的にでているわけではない)
その事例をみていくと目覚ましい成功と感動的な物語に驚きます。
組織が成功要因と完全に断定はできないものの、このような組織形態が存在しかつ非常に大きな実績を上げたことは無視できません。
一部夢物語のような多少気になる部分はあれど、ティールが成立するための条件としてCEOとオーナーがこのパラダイムを持っていないと不可能など(権力構造上つぶされる)、当たり前だけど言いにくいことにもずばっと言ってくれているところなどはリアリズムがあります。

読み進めながら、「そうだよね。経営ってそうあるべきだよね」と思うこともしばしば。

人って素晴らしいと思えるような物語が展開されます。

 

■「ティール組織」の読みづらさの理由

「ティール組織」はとても素晴らしい内容だと思いましたが、挫折したという知り合いもいました。
本の分厚さもあるでしょうが、自分自身読みながらかなり読みづらい本だと思いました。
その理由は下記。

パラダイム(モノの見方、哲学)と組織論と社会論が混在して語られる。
②ティールの定義が中々出てこないで、ファクトの積み上げでティールというものはどういうものかを浮かび上がらせる構成。
③前提知識がないと中々頭に入ってこない。
④コンサルやMBA的な知識があったらあったで、これまでのモノの見方を一度リセットして読み解かなくてはいけない。
⑤抽象的な言葉が多い。

読んでいくとパラダイムの話と、組織の話と、社会の話が最初混在して語られる為、どの話をしているのかかなり注意深く読まなくてはいけなくなります。
そして新しいティールという組織の話を期待して読み続けますが、ティールとは何かということを中々定義してくれません。
ティールであることを、帰納法的に導き出した3つの突破口(ブレイクスルー:そもそもこの言葉のチョイスがよくわからん。。)は出てきますが、結局のところ多くの事例とまとめからティールとはこのような組織だと理解してください、といった構成になっています。
シンプルにまとめてほしいと思っている読者からすると、中々わからないティール組織に苛々しながら読むことになります。
ティールの論点設定はほとんどマッキンゼーの7Sに基づくものと推察されます。著者がマッキンゼー出身の組織コンサルタントで、組織について論じている以上、代表的な組織のFWである7Sが背景にあるのは納得です。
ただ7Sを網羅的に出してくれているというより、ハードSの組織構造、システムとソフトSの共通価値観、組織文化を中心に語る構成です。
経営学の流派からすると、ケイパビリティ派の流れに属します。(戦略は組織に従う派)
ゲイリーハメルや、達成型としてのGEや多元型のサウス・ウエスト航空などが説明なく引き合いに出されています(2社とも特徴的で超有名な企業)が、両社をよく知らない場合は少しピンとこないところもあるのではないでしょうか。
ティール組織の適した組織構造の形態については規模だけでなく、バリューチェーンのの長さも条件にでてたりしてますが、ポーターの戦略論など知らなければバリューチェーンと言われても。。となるような気がします。

※下記の図は本をもとに作成したもの

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一方で、そういった前提知識があったらあったで、にわかに受け入れがたい話がいくつも出てくる為、どうしてそのようなことが成り立つのか、背景など推察しながら仮説をたてて読み進めていかなくてはいけません。
すっと入るというより常に頭を使い続ける必要がある本です。
そして何よりワーディングがとても抽象的というか、言葉の定義がかなりあやふやなものが多く、著者が何を言っているのか、事例を丹念にみて汲み取らなくてはいけません。
目次の進化型(ティール)を語る第三章の、小見出しをとってみても「エゴを失う恐れを抑える」「コンパスとしての隠れた正しさ」「人生は、自分の本当の姿を明らかにする旅」「強さの上に人生を築く」「逆境に優雅に対処する」
など、意味がよくわからす経営の研究というより怪しげな自己啓発な本という感じで、ロジックで証明する話よりもなんかポエムじみています。
著者がどのような意味で、具体的に何を意図してこのような言葉を使っているのか、事例から汲み取ろうとすると大変です。

 

■まとめ

個人的には、この本の内容はとても素晴らしく、是非多くの人に読んでいただきたいです。

心温まる物語もあり、経営って人を幸せにするものだと信じている人は是非読むべき本ではないでしょうか。

ただ大作ですが読むのは大変なので覚悟の程を

(冒頭の書評ではサクサク読めたと言っていましたが、個人的にはすごく時間かかりました)

 

マニアックなエントリーを最後まで読んでいただいた方に感謝申し上げます。