AlphaGoの進化、今後の未来

昨日でGoogle Deepmindと中国が共同で行ったFuture of Go summitは終了しました。

世界に衝撃を与えたAlphaGoが再び観ることができて、個人的には非常にエキサイティングでした。
AlphaGoには再び登場してくれて感謝です。

Googleが昨年トップ選手であるLeeSedolを打ち破って実験は成功したにも関わらず、今回のような企画をしたのは意外でしたが、前回の打ち方でまだ完璧とはいえないことが分かったことに加え、今回は中国市場再参入のマーケティング側面もあったのではないかと思います。
とはいえ中国共産党政府にとってはGoogleは自国の情報をuncontrolableにする脅威そのものなので、今回直前で中国国内でのToutube放映がされなくなったみたいですけど。
今回対戦相手になった柯潔(KeJie)は、この三年間で世界ランキング1位を取り続けた人。
https://www.goratings.org/en/history/
レーティングの変化を観る限り、歴史上最強の一人といえそうです。
この上ない試金石です。

今回のAlphaGoの進化は、結果として圧倒的に強くなった部分を別として、昨年に比較すると主に下記の点にあると思っています。

①効率性の向上
今回のAIを稼働させる電力消費量は前回の1/10になったということ。
電力使用コストが一度アルゴリズムを組み上げていくと、かなり削減しても前回を上回るパフォーマンスを実現できることは、今後のAI革命に有意義な実証実験となったのではないでしょうか?

②着手の多様性
序盤も中盤も前回とは比較にならないぐらい多様な価値判断をするようになったように見えます。
序盤戦略では前回は割と似た布石による一本調子な点がありましたが、極めて多様な布石を打つようになりました。
中盤も優れた中央感覚に前回は驚きをもって受け止められましたが、今回は中央感覚だけでなく実利を取る感覚も優れてますし、それ以上に想定困難な手抜き感覚(盤面全体を観ての価値判断)や石の効率性の判断が衝撃的でした。

③複雑さに対する対応力の向上
前回のAlphaGoでは、第四局でLeeSedolが繰り出した100万分の一の確率の着手に、PolicyNetworkの予想外の着手を打たれた時にモンテカルロシュミレーションの弱点(ランダムシュミレーションの為)として深く正確に読むことが困難という欠点が出ました。
今回は前回以上に複雑な碁もあった上、コウをめぐる攻防(より複雑になる)もあったのですが、一回も僕には欠点は見えませんでした。
強くなりすぎてて弱点が露出しなかっただけかもしれないですが、そのへんは自己対局を観てみようかなと思ってます。


囲碁の世界に対しても、AlphaGoは確かな爪痕を残しました。

①人間の囲碁というゲームの理解度を明らかにした。
人間がどれぐらい囲碁を理解しているか?ということを今回ほど如実に示されたことは歴史上なかったと思います。
思った以上にこのゲームの底は深く、まだAlphaGoですら解は出せない世界が多くあることがわかりました。

②今後の囲碁AIの進化の道筋を示した。
中国テンセント社のAI絶芸(FineArt)や日本のDeepZenなど、Deeplearningの技術を一部開示されたことで、一気にブレイクスルーが起きて、不可能だと思われていた人間のトップ選手を越えるAIが次々出現した。

③人間の進化の可能性を示した。
中国の柯潔(KeJie)は、今回人間がAIの打ち方を学ぶことで進化する可能性を示してくれたと思います。
完敗したとはいえ人間がここまでAIに接近した打ち方ができるとは考えていなかったので、本当に驚きでした。


GoogleのAlphaGoは今後のAI革命の為のいわば巨大な「実験」でした。
アルゴリズムの実験としても、AIのマーケティングとしても、十分な成果があがったと思われます。
なので囲碁に今後それほどこだわる必要はない為、何か合理的な理由がない限り多くのリソースを割くとは思えません。

一方で囲碁業界においては産業構造に囲碁AIがどのような影響を与えるかは、まだ未知数なところがありますが、AI導入における一種の社会実験はむしろこれからなのではないかと思います。
囲碁はそういう意味ではAIによる変化の先端に位置しつづけるのではないでしょうか。

Deepmindは最後にAlphaGo同士の対局記録を50局公開してくれました。
1、2局みただけで、変化が大きすぎて意味のわからない部分が多かったですが、非常に楽しみです。
https://deepmind.com/research/alphago/alphago-vs-alphago-self-play-games/

 

※AlphaGoネタの記事

umeyan.hatenablog.com