碁会所ビジネスを経済的な側面から考えてみる

 

今回は具体的に碁会所ビジネスの事業としての経済性から考えていきたいと思います。

結論からいうと、「稼働率の向上なくして利益なし」
ということになるかと思います。

んなもん当たり前だろ!といわれそう(笑)

 

碁会所の売上、コストを推定をもとに前提条件を組んでおいてみると、図のようになります。
※念のために言っておくと、実在はしません。極めて単純化した想定です。

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固定費型のビジネスで、頑張って損益分岐点超えればハッピーということですが、一応こういうことを押さえておかないと収益につながらない無駄な努力をするということになりかねません。
ex.いの一番に当社では頑張って電気代の削減に努めています、とか ※決して電気代の削減自体を100%無駄と言っているわけではありません。

またここが想定ができることで、初めて具体的な目標の売上高であったり、必要なマーケティング施策の数字を出すことが可能になります。
ex.最低限何人来てもらわないと黒字化しないとか、必要な回転率だったり、碁会所が事業として成り立つ商圏や立地条件、広告を出すうえで許容できる顧客獲得単など

当然、碁会所を始める人にとっては必要な資金繰りも、スプレッドシートを使って財務モデルを組むことで、イニシャルコストとランニングコスト、それに月々の売上高予測と黒字化までの期間が想定できれば、必要な資金調達額が出せます。


今回すごく簡単な推定でコスト構造を出しましたが、果たしてどれだけの碁会所が損益分岐点を超えているのでしょうね?
運転資本がほとんどかからない日銭商売の為、本来つぶれにくいビジネスではありますが、実感値として黒字化に必要な稼働率をキープできている碁会所は少ないような気がします。
まあ会社をリタイアした後年金暮らしで、家賃分の固定費とその他変動費など稼げばいいという方もいらっしゃいそうですが。

 

碁会所業界について考えてみた


碁会所があそこがつぶれたとか、そういう話が最近ちらほら聞こえてきます。
一方で新しく碁会所を作ったり、これから作りたいという人もちらほらいたり。

 

MBAの業界分析と定番といえば、M・ポーター教授提唱の5F(5の力)分析


ということで、碁会所業界にどんな力学が働いていて、業界の魅力度はどうなのかざっくり考えてみます。
※この5Fの分析とは、5つの競争要因
サプライヤーの交渉力
・買い手の交渉力
・新規参入の脅威(参入障壁)
・代替品の脅威
・競争環境
の大きさによって、業界の収益構造が規定されるというものです。

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ちょっと考えなくても大変な業界というのは、前回のブログの新聞記事を読んでもわかりますが、碁会所が苦境というのは単純に囲碁人口の減少というだけでなく、僕は一つは産業構造の問題もあると思っています。
特に大きいのが代替品の脅威だと思います。

 

碁会所というのは僕は、「囲碁の対局者のマッチングサービス」を提供しているビジネスだと捉えています。
そういう意味で捉えると、ネット碁のほうが優れた利点って多いです。
①場所を選ばない。
②無料で遊ぶことも可能。
③ネット上のため、地理的制約がないことからより広範囲の多くの人と対局できる。
もちろんリアルな対局には、ネット上では生み出せない価値もあるとは思うのだけど、こと「対局者のマッチング」という機能だけを捉えるなら、むしろネット碁の方が利点が大きい。

※もちろん囲碁全体としてはネット碁、アプリなど新しいテクノロジーの普及で楽しめる環境が増えることは歓迎。

適切な喩えかどうかは分かりませんが、多くの家庭にお風呂が備え付きになるようになって(代替品の増加)、街の銭湯が減っていくようなもんですかね。

 

当事者としてこの5F分析でいえることは
碁会所業界はだからだめなんだと諦めることではなく、
これまでの業界の在り方では厳しいため、既存サービスと異なるビジネスを展開していく必要がある認識を持つこと、です。

変化しないと生き残れない、というのは多くの企業や業界と一緒ですねー

囲碁人口減少は問題?

囲碁人口が減っていることは問題なのか?

前回の続きです。
囲碁人口が減ってることは問題なの?
について考えてみます。

 

まあ囲碁を知らないひとからしてみれば、正直まったく問題ないでしょう。
自分自身、21歳の時に囲碁を覚えるまで、まったく自分の脳内に囲碁のことがよぎることなく生活していましたし、なくてこまるもんでもないですし。
あるとしたらせいぜい面白いゲームを覚える機会が減る機会損失ぐらい?

問題があるとしたら、何かしら囲碁に関わっている人たちにとってでしょう。
こんな感じでしょうか?

 

囲碁の業界関係者にとって
市場規模が小さくなって、経営を維持するのが難しくなる。
スポンサーを見つけることが難しくなる。
結果業界人が食べていけなくなる。
囲碁愛好者にとって
対局相手が少なくなる。
市場が縮小することで業界のプレーヤーが少なくなり、受けられるサービスが少なくなる。

2010年にはこんな新聞記事がでているみたい。
http://quality.seesaa.net/article/152804332.html

碁会所の経営難
公益法人日本棋院の財政問題


これは実際に問題になっているようですが、たしかに囲碁人口の減少が響いているのは間違いないでしょうが、本質的な問題は別にあると思っているので、それは別エントリーにて。

囲碁の業界に馴染みがない人のほうが多いので、業界の分類と推定市場規模をまとめてみました。
※特に世の中にでている情報ではないので、業界分類については勝手に脳内の情報を整理して、市場規模は統計や決算書から推定しています。

 

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日本の囲碁人口ってどうなっているの?

 ・囲碁人口ってぶっちゃけどうなってるの? 

ちょっと調べてみると、こんな数字がでてくる。
2013年の囲碁人口は280万人、参加率2.8%
レジャー白書2014による統計データ

 

これだけみると多いのか少ないのかもちょっとわかりにくいのだけど、時系列でみてみるとこんな表になる。

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囲碁人口、すんげー勢いで減っています。
年率-4%なんて、ちょっとしゃれにならない数字感です。

まあこのこと自体は、結構前からずっと言われてきたこと。

ちょっと考えてみたいのは
囲碁人口が減ってることは問題なの?
囲碁人口が減っているメカニズムって何?
囲碁業界の未来予測
④どうやったら囲碁人口って増えるの?

ということです。
①~④まで一気に書くと長くなるので、また別エントリーにて。

ではでは!

 

(ちょっとメモ)
・そもそも囲碁人口ってなんなの?

公益財団法人日本生産性本部が調査した統計「レジャー白書」により推計された囲碁の参加人口

参加人口=
参加率(1年に1回以上余暇活動を行った人の割合)×総務省統計局の推計による15歳~79歳の日本人口
※統計のサンプルは5万以上の都市部に住む3000以上の数

まあ日本の人口減少自体は、政策レベルでやらないとなかなか変化しないと思いますので、主に考えるのは「参加率」の問題ですね。