キングダムについて語りたい

みんな大好き漫画「キングダム」
いまだに何度も読んでるし、ところどころに出てくるエピソードや台詞にちょっとうるうるきたりしてます。
なんというおっさんホイホイな、キラーコンテンツなのでしょうか。

この漫画を最初読んだ時、そんなにヒット作になるとは思っていませんでした。
最初読んだときの感覚は下記の通り

①まず主人公が「李信」ということ
自分の中では李信という若手将軍は、史記を読んでいる感じでは王翦の列伝に出てくる引き立て役としての登場(末路もかなしい)なので、果たして主人公としての魅力がだせるのか?と疑問に思っていました。

②秦の始皇帝を助けるという設定
始皇帝は中国のグランドデザインを創り上げた偉大な人ですが、基本的に悪評高い人です。猜疑心が非常に強そうだし、独裁色が強い人というイメージです。
万里の長城もそうだけど阿房宮とか巨大な大奥みたいなの建てて人民を使役したり、焚書坑儒や、最後は不老不死を追い求めたり、晩年は結構キツイ。
こんなやつを助けていくという話が面白くなるのだろうか?と心配してました。

③王騎のキャラデザインがキモイ&創作キャラで架空歴史感が漂っていた。
王騎とかいう聞いたことのない将軍が伝説の将軍扱いされていて、しかもオカマ言葉、タラコ唇、ありえない鎧きてる。大丈夫か??
(※秦国六大将軍は作り物だと思うけど、白起は超有名。王齕、胡傷、あたりも知ってる。司馬錯、名前聞いたことある。他知らぬ、作った?という感じだった)

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出典:キングダム 1巻   王騎登場シーン


読み進めていくと、全て覆されました。

ええ、それはもう見事に。


・信の魅力
天下の大将軍という夢に向かって一直線。誰よりも主人公らしい主人公になっていました。
特に輝きだしたのは、飛信隊という自分の部隊をもってから。
信は、ナチュラルなリーダーシップの塊のような男になっていました。
彼は典型的なカリスマ型リーダーで、エマージェントリーダー(※危機の時のリーダー)でもあります。
とにかく率先して一番危険の高いところに飛び込んでいき、自分の背中で隊員達の心を震わせていくリーダーです。
最初は絶対こんな部隊に所属したくない(命がいくつあっても足りない)と思うのに、読んでいくと飛信隊っていいなと思ってしまいます。
そんな自分はきっと「尾平」。。

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出典:キングダム44巻

 

・キングダム史観と呼んでもよいぐらいの始皇帝観の変化
基本的にこの時代の歴史書「史記」は前漢の時代に書かれたもので、漢王朝を肯定するためには前王朝である「秦」が悪くないといけないのですよね。
だからこれまでの描かれ方としても、秦王朝ってスターウォーズ銀河帝国的なノリで、戦国時代は強大な秦に立ち向かっていく英傑たち(戦国四君や藺相如※一番好き)の物語という感じでした。※あくまで個人的印象です。
秦の始皇帝の若い時代の物語は、これまでフォーカスがあまりあたらなかったのだけど(呂不韋との権力闘争ぐらい)、合従軍が蕞(サイ)という町を攻めた史実などを基に、若き理想に燃える君主像を描き出されていた。
全て史実をベースにしながらも矛盾しない、新しい理想的な君主としての秦王政(始皇帝)が描かれています。
三国志曹操像が、吉川英治の小説やKOEIの三国志シリーズそして蒼天航路などで、「悪人」から「イノベーター」とか「英雄」に変わったの同じで、きっとキングダムによって始皇帝と秦のイメージは大きく今後変わっていくのではないかと思っています。

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出典:キングダム31巻 秦王政が住民を奮い立たせるシーン

 

・王騎にかっこよ死するわ
最悪のビジュアルをして第一印象キモイから、理想の上司&主人公の天下の大将軍のロールモデルに。
人のかっこよさには、ビジュアルなんて関係ない、と思わせられてしまう王騎の生き様。
その立ち振る舞いに胸キュンする男子が続出しているはず。(キュン死にしそう)
特に作者が最も悩みぬいたという16巻のあたりは圧巻です。
王騎という人は不勉強でしたが、史記に「王騎死す」とだけ記述があるようです。
作者はここから、死んだことが記述されているぐらいだからすごい人だったのだろうと想像して、あの王騎像ができていったようです。想像力すごすぎ。

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出典:キングダム16巻


現在のキングダム連載は、趙国との国家の命運をかけた全面戦争に突入しています。
「李牧」と「王翦」という戦国時代を代表する名将の激突。
創作ではなく二人とも歴史的に有名な第一級の将軍です。
そういえば銀英伝の作者田中芳樹さんが中国史に名を残す100名の名将を選んだ「中国名将列伝」なる本を出してますが(上記2名も選ばれています)、きっかけは日本人に李牧があまり知られていない(中国人は誰もが知ってる)と思ったからだったそうな。
キングダムによって、李牧はかなりの有名なキャラになったはず。
主人公の信は、連載では堯雲という創作キャラと現在対峙中ですが、堯雲は藺相如の遺志を継いでいるという、藺相如ファンからすると胸アツな展開。
(※キングダムの描写の中の藺相如は史記にでてくるイメージとはかなりギャップありで微妙ですが)
この先の展開がますます楽しみです。


飲み会でぐだ巻いているようなこと書いてしまいましたが、歴史マニア視点で語りたくなってしましました。
誰か飲みの場でキングダムトークしましょう。

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マニアックなエントリーを最後まで読んでいただいた方に感謝申し上げます。