タイムマネジメントの相談を受けて
タイムマネジメントの件、認識を理解しました。
すごい長い文の追記で恐縮ですがすべてこれをいつもしているわけではないです。
「理不尽」の効用について
「理不尽」の効用について
ちょっと理不尽ということについて考える機会があったので、書き留めておこうかと思います。
内容としては理不尽を受け入れることの効用について書いているのですが、誤解がないように前提としておいておきたいのは、むやみやたらと理不尽に耐えろというつもりはないこと。
むしろ理不尽なことは極力なくすべきだし、理不尽な環境を変えることができるのであれば変えた方がよいに決まっています。
理不尽の許容が行き過ぎると先日の電通の事件や、ブラック企業になっていまいますので。
少なくとも自分自身の立ち振る舞いとしては、理不尽なことはするべきではないと思います。
一方で身に降りかかってくる理不尽については、全てを避けることはできるわけではありません。
むしろより積極的に受け入れた場合の効用について経験のなかから考えてみました。
■理不尽を受け入れた場合の効用(メリット)について
①現実を知る
そもそも世の中は道理では動いていないことが圧倒的に多い。
とはいえついつい忘れがちになることも多いので、自分自身のバランス感覚を取り戻すうえではよい機会になることも。
自分自身がコントロールできない「理不尽」について嘆いても仕方ないし、ある程度やむを得ないことも多いので、そういったことが起こるのが現実としてどう向き合っていくかに思考を集中させる。
②精神的に鍛えられる。
感情を制御する能力という意味と、痛みを知ることでの共感能力という意味で、精神的に成熟する機会になります。
大概強烈な理不尽を体感していたら、自分の感情と向き合いコントロールせざるをえなくなります。
その結果それ以下のことはだいたい許容できる気がするし、そもそも人間は体験していないことは想像ができないので、理不尽な経験をしている人に対して共感をすることができるようになる。
③理不尽なことを突きつける人を理解する。
理不尽を感じる時は、自然現象などには感じず、たいていは特定の誰かがいて、人間関係に起因していることが多いように思えます。
理不尽と感じるだけの要求を求めてくる人には、何か「弱さ」の裏返しがあって感情的になっているか、強烈な「価値観」に基づいた何かがあるのか、もしくはとてつもない自分本位な馬鹿な人なのか。
相手のことを本質的に理解するうえではいい機会。(もちろん自分自身がその人に感じている感情が原因の可能性も高いので、そのへんはバイアスを考慮する必要あり)
④時には同情を得たり、味方になってくれる人も
これは理不尽な扱いを受けたときの立ち振る舞いにもよるとは思うけど、周囲に配慮して道理にかなった振る舞いをしていれば、ピンチがチャンスに変わることも多い気がします。
世の中自分一人で生きてるわけもなし、理不尽は生きる上ではつきもの。
この種の悟りって、子供時代から何度も経験をするものだとは思うのですが、らせん状の成長の中で繰り返す気がします。
もちろん理不尽に対する「怒り」が変革や行動を生み出すこともあり、全てを受け入れたほうがいいわけでもないでしょう。
他人に理不尽さを受け入れるように要求する人は、たいてい身勝手な人が多いですし。
積極的に受け入れる理不尽と、徹底的に戦う理不尽を分けて、きちんと判断軸をもっておくことが重要だと思っています。
一時的には逃避という選択肢もありだと思います。もしくは戦う土俵を変えることも。
ただ延々と逃げ続けることは、人生から逃げることと同義に近いので、どこかで受け入れながらより硬軟交えて前に進む(これもある意味変革)か、ある場所では徹底的に戦う道を選ぶかは決断するんでしょう。
判断軸は現実サイドに寄せる人と理想サイドに寄せる人に分かれそうです。志などで統合されていれば素晴らしいですけど。
何事もそうだとは思いますが「正解」はないけど、自分自身の人生を生きるためにも判断軸は持っていたいですね。
0.5歩先の未来を予測することについて
久々にブログを投稿。
ビジネススクールで教えている経営学の基本的な思想の底流に、
「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残ることが出来るのは、変化できる者である。」(ダーウィンが言ったとされているが実際は不明)
があると思います。
だからこそ経営戦略は最初に外部環境分析からスタートして、自社の状況が外の環境に適応しているか、持続的に適応し続けられそうかを考えるところから始まります。
まあ当然アンマッチなところもあるわけで、その時に生き残るために「変化する」必要がでてくるわけです。
ただこの「変化する」というのはそれなりにくせ者で、それなりに時間がかかる。
今の外部環境に適応しようと一生懸命変化しようとしても、外部環境がすでに変わってるなんてことになりかねません。
したがって、「ちょっと先の未来を予測して、動いていく」必要があるわけです。
外部環境の変化をどうやって予測するか?
超能力の未来予知みたいな力があれば別ですが、100%あたる未来なんか予測することはできません。
一つの方法としては、現状のファクト(事実)と統計から考えるということ。
一例としては人口動態なんかで、日本の人口が今後どうなっていくかは、出生率や移民政策とかが変わらない限り、ある程度推測がつきます。
もう一つの方法とは、「歴史から学ぶ」ということだと思います。
歴史を学ぶ意味は下記三つ
・歴史観を養う
→思考のタテ軸として、連続した時間軸の中で今自分たちがどの立ち位置にいるのか?理解すること
・世界観を養う
→思考の横軸として、世界の中で自分たちがどのような位置にいてどのように相互に影響を与え合っているのか理解すること
・人間観を養う
→人間理解として、状況が変化するなかで人とはどのような行動をするのか?理解すること
世の中がどのような動きをしていて、過去の人間がどのような動きをしていたか理解していれば、これからどう環境が変化していくか仮説が立てやすくなると思います。
最近経営戦略クラスのメンターをしていた時に、PEST分析などどうしたらいいかわからないという受講生を見ながら、ふと上記のことが思い浮かびました。
こんだけ長々と書き連ねましたが、今年読んだ書籍で将来を予測するための素晴らしい歴史関係の本に何冊かであったのでシェア。
自分の中ではメガヒットの本。
著書の中に「問い」があり、それにこたえる形で論点とそれについての解釈が語られている素晴らしい本です。
ユヴァル・ノア・ハラリ 「サピエンス全史」(上)(下) 文明の構造と人類の幸福 河出書房新社 2016年9月
250万年に及ぶホモ(ヒト)属がいかに進化していったか、人は「虚構」の世界に生きていることを明らかにする本。
認知革命、農業革命、科学革命という人類史に起きた大きなインパクトを紐ときながら、人類の成長エンジンと人類のマクロ的な動きがどう変化していくのかを明らかにしてくれてます。
谷口智彦 「明日を拓く現代史」 ウェッジ 2013年
・米国が作った世界システムとは何か?
・なぜ日本はそのシステムで成長できたのか?
・中国リスクとは何か?
・今後の世界はどう動くのか?
上記の問いをベースにして、どのように現代の世界がつくられ、今後どうなるのか語ってくれています。
とても衝撃を受けた本だったので、興味があればぜひご一読を
両者ともわりと現実を踏まえながら、未来に対して希望を持っているのが印象的でした。
ディープラーニングについて調べ、考えてみた。
1月28日のニュース以来、夜も眠れないぐらい興奮してます。
興奮しすぎて鼻血ぶー太郎です。
興奮しすぎて何を書いているのか、わけわからなくなるぐらい、やばいです。
あれ、やばいよ、やばいよと言い続けても、出川哲郎か!といわれるのが関の山で伝わらないので、なるべく何がやばいのかを、自分の考えを言語化して伝えたいと思います。
■歴史の1ページが刻まれた。
今回のGoogleのAlphaGOが囲碁のプロを破ったというのは、個人的には産業革命の始まりで「初めて蒸気機関車が走った」ぐらいの衝撃があります。
言葉にするとこんな感じ?
蒸気機関の発明により、エネルギーを力に変換して、単純労働を代替可能になりました。
今回は深層学習による人工知能により、コンピューターが経験による判断と意思決定を代替することが可能になりました。
※最初観たときにコンピューターが打ってるとは思えない棋譜でびっくりしました。
いやグーグルが人工知能専門の教授と教え子たちを抱え込み、DeepMindを4億ドルで買収したのもよくわかりました。
再び人類が成長の為のカギを手に入れたのではないかという思いが生まれ、正直これから世界が急速に変わっていくのを感じ、わくわくします。
■GoogleやFacebookが人工知能を開発、買収する理由とは?
当然ながら、囲碁の真理を解き明かすとかいう高尚な理由ではありません。(笑)
GoogleやFacebookの本質は広告事業であり、そのコアとなるキーテクノロジーが、アルゴリズムであり、アルゴリズムにより蓄積された膨大なデータとそこに集まる人こそが他社の追随を許さない競争優位となります。
GoogleとFacebookは、世界の情報を支配している企業といってもよく、この両社に存在していない情報は、基本的には「存在しない」扱いになります。(※他からはみえないという意味)
まあ日本はYahoo Japanが頑張ってるので、若干例外ではあるけど、中国なんかも両社を排除してバイドゥ(でしたっけ?)があるので例外ですね。
新しい人工知能は、両社にとって典型的な破壊的イノベーションを生み出す存在で、しかもそのポテンシャルが非常に大きい。
もし万が一どこぞのスタートアップが、新しいAIによるアルゴリズムにより、今の作り上げたバーチャルプラットフォームを脅かしたりしたら、たまったもんじゃありません。
ましてやなんでも自動化させるのは、本来Googleのお家芸。
人工知能により、検索能力を上げたり、広告表示能力を上げることは自分たちのコア事業を高めることになります。
囲碁のAI開発は、人工知能が機能するかどうか判断する絶好のテストケースになります。
絶好と思える条件は下記3つです。
①すでにビックデータと呼べる大量の打ち方のデータがある =実現可能性が高い
②過去の技術では認知と価値評価が実現不可能であったこと。
③知能の働きが視覚化されて見えること。
すでに欧州プロを打ち破ったことで、少なくとも人間の高度な熟練技能者レベルの判断などは学習による代替は可能と証明されました。
イ・セドルを破れば、膨大なデータを基に学習すれば、人間以上に正確な判断と意思決定ができるようになる可能性があるということですね。
■ディープラーニングとは何か?
これはGlobis知見録に素晴らしい動画がありました。
東京大学の松尾准教授による、最高の説明です。※昨年の秋の登壇のようです。
ディープラーニングとは何かというと、結論から言えば、データをもとに「何を表現すべきか」が自動的に獲得されていること、となります。
Auto-Encorderと呼ばれる回路を、多層構造で組み上げていくようです。
twitterで論文の内容の多層構造に対して、誰かが「囲碁ミルフィーユ」と突っ込んでいたのが印象的でした(笑)
図は論文にあるネットワーク構造です。
(下記動画は必見です)
人工知能の未来~ディープラーニングの先にあるもの Part1/2 ~東京大学・松尾豊氏~
https://www.youtube.com/watch?v=GbmKWY7SLng
人工知能の未来~ディープラーニングの先にあるもの Part2/2 ~質疑応答~
https://www.youtube.com/watch?v=53fsWd5o2fk&spfreload=10
■ディープラーニングの学習可能条件とは?
2012年から第3次人工知能ブームが来たようですが、それには環境変化によるところが大きそうです。
①ムーアの法則で演算処理能力がおおきくなったこと
②ITが活用されてから時間がたち、ビックデータといえるだけの情報の蓄積ができていたこと。
今回は上記に加え、優れた技術者と資金力がディープラーニングの構成を組むには必要そうですが、Googleはすべて条件を満たしていました。
※しかし昨年にグーグルは、画像認識で人間を越えるものを創り出してしまっていたんですね。。
■一口に人工知能(AI)といっても同じではない。
今まで人工知能というと、結構まるっと同じように考えてしまいがちでしたが、クリステンセンのイノベーションのジレンマ風に
①持続的イノベーションの人工知能(S)
②破壊的イノベーションの人工知能(D)
に分けるのは非常に面白いなと思いました。(※動画参照)
意外とプログラムやっている人でも、ディープラーニングのことはわからないという人は多そう。
SNSなどの反応みた印象ですが。
■一方、あまり過大評価しない方がという声も
AlphaGoが誇大広告ぎみな件
http://aleag.cocolog-nifty.com/blog/2016/01/alphago-21ae.html
上記は多少今回の話とは論点ずれますが、AIの進化のジャンプはそこまでではないという意見ですね。
(※囲碁の強さだけに限ればということですが。内容はだいぶ違うとは思います)
■人類の未来はどう変わる?
最初このニュースを見て起きている出来事を理解したとき、人工知能は、①演算処理→②学習による知覚→③感情理解による共感へと進むのかな?と勝手に思いましたが、どうもそうではなさそうですね。
心のある人工知能、ロマンがあるんですがね。
松尾教授は生命と生存本能の結びつきから心の部分が発達しないだろうという見解をだされていて結構納得しました。
自動運転やロボットなどは、急速に現実味帯びてきます。
人間以上に安全かつ正確に運転したり、熟練工以上の精度でロボットが疲れを知らずに作業が可能になったり。
そういやグーグルっていっぱいロボット会社も買収してますね。
http://svjapan.blogspot.jp/2014/02/google1514326800.html
コマツとかは、ビックデータをうまく活用しているので、AIと相性よさそう。
一回作ってしまえば、少ない容量で稼働させることができるみたいなので、成長率高そうです。
パソコンや携帯電話の普及と同じで、状況によっては一気に世界が変わりそう。
すごい時代に生まれたなぁ
Google DeepMindの衝撃、コンピューターが人間に勝利する価値。
2016年1月28日、囲碁界だけでなくコンピュータープログラム業界や神経科学界にも衝撃が走った日だと思います。
これまでコンピューターが人間に勝つのは困難とされていた最後の砦でである囲碁で、欧州のプロがGoogle DeepMind社開発のプログラムAlphaGoにハンディキャップなしで5戦全敗したからです。
棋譜を5局ともみましたが、私個人はコンピューターにぶっちぎられてしまった感満載です。
もう絶対かなわない(笑)
下記記事
ついにコンピューターが囲碁でプロ棋士に勝利、倒したのはGoogleの人工知能技術
http://gigazine.net/news/20160128-computer-win-human-at-igo/
Google DeepMind AlphaGo
http://deepmind.com/alpha-go.html
グーグルが最新人工知能使い囲碁ソフト開発 プロに勝利
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160128/k10010388481000.html
AlphaGo: マシンラーニングで囲碁を
http://googlejapan.blogspot.jp/2016/01/alphago.html
■プログラムが人間に囲碁で勝つこと自体は意味はない、されどその勝利の意味はとてつもない。
いきなり矛盾した表題になってしまいましたが、今の心境はこんな感じです。
正直、プロ棋士が人工知能に負けたところで、本当の意味で誰かが困るわけじゃないでしょう。(何かしらで競合している人は別として)
囲碁知らない人からは、「へえ、そうなんだ」くらいのもんでしょうし、囲碁に自信があるひとは心情的になんかやるせないぐらいのもの。
走りのスピードで、人間がF1マシンに負けても、当然というものと一緒だと思います。
一方でこのプログラムがプロレベルの人間に囲碁で勝つということの偉業についてなんかいまいち理解されない感じがもやもやして、ちょっとブログを書きたくなりました。
特に下記2点について考えていきたいと思います。
①囲碁というゲームのプログラムにおける困難さ
②強化学習(Reinforcementlearning)というブレイクスルーがもたらす汎用性と価値
■囲碁の意思決定の思考プロセスとは?
囲碁の意思決定プロセスを図にするとこのようなものと私は考えています。
※昔囲碁の思考プロセスについてビジネススクールで質問をいただき作成した図です。
この図でいうところの「読み」にあたる部分が、コンピューターが人間に対して優位なところで、ツリー検索による演算処理能力が必要なところです。
一方、直観と大局観については、感覚要素が大きく、コンピューターには真似できないと考えられていました。
■これまで囲碁を難攻不落にしていた難所とは?
・演算処理するには場合の数が多すぎること
あまりにも場合の数が多すぎて全ての手に対して、演算処理をするわけにはいきません。
人間は経験による「感覚」によって、不要な着手を考えないようにしていますが、感覚のないコンピューターはそうはいきません。
※チェスなどは、その点場合の数が囲碁に比べて少ないので、スーパーコンピューターによる強引な検索が可能でした。
・局面の評価が難しい。(評価関数をどう設定するか困難)
そもそも途中でどちらが良いのか、これまでは感覚処理を行っており、評価関数と設定するのが困難でした。
囲碁の歴史は、一説には4000年とも言われ、中国最古の歴史書にも登場しています。
囲碁のプロ棋士は、膨大な経験によって身に着けた常人からは考えられないような「感覚」と「ヨミ」で、囲碁において精度の高い着手を打っています。
コンピューターの処理能力があがってきたことで、ある程度強引に演算処理で検索(モンテカルロ・シュミレーション)して、近年は強くなっていましたが、プロには到底及ぶレベルではありませんでした。
■Google DeepMindがもたらしたブレイクスルーの意味とは?
今回、Google DeepMindは強化学習というブレイクスルーによってプロを破るプログラムを作成しました。
といっても強化学習という考え方自体は、ずいぶん昔からあったみたいですけど。(人間の脳もドーパミンを介した強化学習を行う神経回路という話みたいですし)
今までのプログラムは、演算処理の能力の高さに頼っただけとすると、今回のプログラムは従来のモンテカルロ木検索はそのままに、policy networkとvalue networkという二つの手法で次の手を予測して、さらに自己対戦を繰り返してもっとも勝率の高い手を学んでいくスタイルみたいです。
早い話人間みたいに、経験から学んでいくことで、感覚に近い評価をできるようにしていると思えます。
囲碁自体は単なるゲームにすぎませんが、非常に難易度の高いハードルが存在している中、deeplearningが機能することを証明したことには、意味があると思います。
■強化学習がもたらす価値
Google(正確には買収したDeepMind社)の開発したAIの強化学習が示す価値というのを言葉になおすと下記のようになるのかなと思いました。
「経験がものをいう領域において、十分なデジタル情報の蓄積がある場合は、強化学習のAIによる代替が可能となる」
十分なデジタル情報の蓄積がある場合は、と置いたのは、今回に関する昨日発表されたNatureの論文をちらっと見たときに、KGS GOサーバーからの対局の蓄積された情報による寄与が大きいとわかったからです。
※昨日発表のNatureの論文は、これからちゃんと読もうと思いますが、英文であることとかなり専門的な内容であることから、是非プログラミングの専門家の発表を待ちたいところです。
気候予測も疾病分析も一応は上記定義にあてはまるのかなというような気はします。
他にも使い道ありそうですけど
■facebookとの比較
facebookの研究が今どうなっているのか、まだ具体的にはわかりませんが、27日にマーク・ザッカーバーグ(facebookCEO)が自らのfacebookに上げた囲碁ソフトの棋譜をみる限りでは、かなり弱い印象でした。
現在視覚からのパターン認識から可能性を探っているという話なので、応用する着地点が違うのかもしれません。
※顔認識の精度を高めるなど、視覚パターンが応用される分野など
(参考)Google and Facebook Race to Solve the Ancient Game of Go With AI
http://www.wired.com/2015/12/google-and-facebook-race-to-solve-the-ancient-game-of-go/
ついに人工知能が囲碁で人間に勝つ? フェイスブックが開発中
http://www.gizmodo.jp/2015/11/aifacebookgo.html
■100万ドルの対局が楽しみ
Googleは近年で最も実績を残した世界最強の棋士の一人、イ・セドル九段と3月に対局を組んでいるとのこと。
賞金はなんと100万ドル。
http://nitro15.ldblog.jp/archives/46676784.html
イセドル自体、人間離れした超人みたいな碁を打つので、どっちが勝つか全くわからないのですが、本当に楽しみです。
歴史上でもイ・セドル程強い棋士はそうそうはいないと思いますし、人間の能力の限界点近くまで来てる人だと思ってますから。
人類史に新たな1ページが刻まれるのか、結果が楽しみです。
下町ロケットを経営学の視点からみてみた②
佃製作所代表取締役社長の佃航平は、戸惑いながらも悩んでいた。
株式会社帝国重工の宇宙開発事業部長の財前が突如佃航平のもとを訪れ、佃製作所の持つ水素エンジンバルブに関する特許を20億円で買い取りする要望を伝えられたからである。
佃製作所を取り巻く環境は決して容易なものではなかった。
佃製作所は従業員200名、資本金3000万、年商100億に満たない精密機器製造メーカーである。
つい先日佃製作所は最大の取引先京浜マシナリーから、エンジン部品の調達をいきなり打ち切られたばかりである。
さらにはメーンバンクの白水銀行から、研究開発費に費用をかけすぎていることを理由に追加融資を断られている。
エンジン部品を製造する大手競合先ナカシマ工業からは、自社の主力商品ステラエンジンに関する特許侵害で訴えられ、90億円の支払いを要求されていた。
ナカシマ工業からは和解案として51%の株式譲渡を打診されている、困難状況下である。
現在ナカシマ工業を逆に自社の特許を侵害しているとして、逆訴訟を同時に行っていて賠償金を要求して、審議を争っている。
佃航平は、帝国重工財前からの要望に対して、どのように答えたらよいのだろうか。
回答に時間を1週間もらったものの、決断に時間は多くかける余裕はなかった。
下町ロケットを経営学のケースにしたらこんな感じの始まりでケーススタディになるのでしょう。
下町ロケット全10回を通して、経営上の一番の決断のジレンマが生まれるのは、第1回~第2回にかけてです。
■経営上のイシュー
当初選択肢としては、下記2点
①帝国重工に売却する。
②特許使用許諾契約として、使用料を払うことを飲んでもらう。
考えるイシューは下記のようなものになってくるでしょう。
・いつ資金はショートするのか?
これはアカウンティング(会計)の領域。これまでの財務諸表と経営戦略、マーケティングを基に月次で予測損益を出して、必要な運転資本を算出。
この辺は物語では経理部長の殿村さんが手腕を発揮してますね。
・どうやって資金調達をするのか?
知財裁判の賠償金獲得、帝国重工の特許交渉、借入余力など精査しての追加融資もしくは社債発行、エンジェル、ベンチャーキャピタルなど幅広く検討してよいけど、
実際考えられる金融機関、投資家、投資会社とすべて交渉をしているみたいですが、断られています。
※VCはイグジットのことを考えるとどうかと思うのと、個人投資家は額が大きい為大変そうですけど。
メーンバンクの白水銀行へは、研究開発費の削減を決断しPLの構造を変えて融資を依頼してます。これも断られて、結局裁判か帝国重工との交渉かというとこにいきついています。
・水素エンジンバルブの特許の価値は?
‐帝国重工への妥当な売却額は?
‐特許使用許可契約にした場合の価値はどうか?
このへんはファイナンスとネゴシエーションの領域ですが、どれだけ合理的な価値判断ができるかということと、2社の交渉力を検討することになります。
■佃航平の決断は「非合理の理」?
一橋大学経営大学院の楠木教授は持続的競争優位を築いた企業には、一見して非常識だがよくよく見ると合理的な「非合理の理」というべきことを実行していると言われています。
佃航平は、帝国重工の申し出に対して、突如第三の選択肢「部品供給をしたい」と申し出ています。
もし裁判に勝って和解金56億円が入ってくることがなかったら、この決断は絶対にでてこなかったでしょう。資金がなくなっちゃいますから。
※申し出が来たのは裁判結審前、供給申し出は結審後。
経営危機を乗り越えて、あとは売却か使用契約かどっちが得かということを合理的に決めそうですが、佃は第三の選択肢を提示します。
この辺はドラマとして見せ方も巧い。
一見すると、ロケット失敗の際は訴えられる可能性もあるし、収入面では2つの選択肢に遠く及ばない非合理な選択肢だとは思うのですが、もう一段レイヤーを上げていくと理のある決断だとわかります。
この決断があって前回ブログで分析したように組織の7Sが強化されていくことになります。
ロケット製造の品質への挑戦と帝国重工のキャラの立ってる詰めが、佃製作所社員たちのプライドを刺激して、団結力と自社への愛着を高めていくことになるからです。
結果として組織は強化され、ロケットを納品しているという企業ということで、ブランドと信用を獲得してKSFを満たしていくことになります。
■決断の底流にあるものとは?
単純に表面上の合理的な話だけでは、第三の選択肢「部品供給」については出てこなかったかもしれません。
なぜ佃航平は、部品供給をしたいと言ったのか?
それは彼が歩んできた経歴と価値観が強く影響をしているものと思われます。
氷山モデルで表すとこんな感じでしょうか。
■最高のシナリオは結果論?
56億のキャッシュが入るというラッキーがなかったら、この決断はやってはいけない決断となるでしょう。
特許売却すれば経営危機は一気に解決するのですから、資金の見通しがつかない状況だと売却もしくは使用契約するしかなかったと思われます。
※額は精査して交渉するべきでしょうが。
ただそうなると感動の物語にはならず、良い会社のまま存続となるだけです。
今回は佃航平のこだわりにより、帝国重工への返答を遅らせその間に資金の見通しがつき、よりハイリスクだが会社のDNAを強くする決断を行えたことになります。
ついついこんな危機を迎えると視野が狭くなりそうですが、佃航平は自分の判断を鈍らせませんでした。
心からの価値観に基づいた決断は、成功確度を高めるということですかね~。
経営はお金だけの話じゃない。
ただ価値観だけの問題じゃなく、社員たちが奮起できたのは、佃と社員との間の積み上げた日ごろの信頼関係があってこそでした。
このシナリオになったのは、人間性の勝利ということで
下町ロケットを経営学の視点からみてみた。
TBSのドラマ「下町ロケット」、本日が最終回ということ。
裏番組のクラブワールドカップ決勝 バルサ×リーベル戦とかぶるのが残念。
楽しみです。
下町ロケットをわりと経営学のケーススタディのように観ていたので、思ったことをだだっとまとめてみました。
ドラマ見てない方はネタバレ注意。
■佃製作所の危機とは
佃製作所には様々な障害がドラマ上で展開されますが、真実これはやばいというのはやはり第1回~第2回の資金繰り問題でしょう。
会社は資金が尽きたら、ゲームセットです。
神谷弁護士は、本当に救いの「神」になっています。
最大の取引先(年商10億)を失う+ナカシマ工業からの知財訴訟によって、運転資金が足りなくなる上、銀行から融資を断られるという事態でした。
これを訴訟によって和解金56億を得るだけでなく、佃製作所の知財戦略を見直しさせることで、戦略上の弱点を補うことになりました。
■佃製作所の強みとは何か?
ドラマ見ながら感心してしまいますが、佃製作所はすごい企業だと思います。
整理すると下記のような感じでしょうか
・戦略:技術開発による差別化集中戦略。
※たぶん佃航平は経営を引き継いで、経営の戦略を転換させている節があります。
その根拠は、佃製作所の事業部構造と、構成される従業員の年齢層のばらつき。
山崎率いる技術開発部は全員がめちゃくちゃ若い。佃航平時代に全員採用された人たちでしょう。
一方年齢層が高いのは営業第一部長や、生産部門の人たち。
おそらく前は下請けとして普通に受注生産するだけのモデルだったのではないかと思います。
・財務、会計:「我々の出す数字は正しい。いい時はいい時なりに、悪い時は悪い時なりに会社の実態を反映させている」
東芝へのあてつけか!?と勘ぐってしまいそうなセリフ。
たった一日で要求される大量の情報を帝国重工に提示するシーンがありますが、これは日々経営を行いながら、きちんと数字を取る仕組みがあるということ。
ちゃんとKPIなど設定しているのでしょう。
資本金は3000万ということですが、簿価上の話。自己資本比率も厚いということなので、かなり利益剰余金を積み上げてきているようです。
※膨大な固定資産(土地、建物、機械設備)を考えると、総資産額はそれなりでしょうし。
実際このビジネスモデルではハイリスクな財務は取りづらいので、デットファイナンス(借入)は最低限に抑えているのでしょう。
・組織:戦略を実現する「組織」にこそ真の強みあり。
佃製作所の競争優位性とは他社からも認められる圧倒的な技術、この技術を生み出すのは「人」と「組織」です。
組織の構成要素7Sでみるとざっくりこんなところ。
技術を生み出すのはヒトと企業文化、これの源泉は佃航平のリーダーシップなので、ナカシマ工業が51%の佃製作所の株式を仮に取得できたとしても、佃航平がいなくては同じレベルで新しい技術を生み出していくのは難しかったと思います。
挨拶をする文化、成功をみんなで喜ぶ(自分事と捉える)、賞賛する文化、きっちりと5Sが守られている、組織の価値観が明文化されている(技術、誠実、品質など垂れ幕)、
神は細部に宿るじゃないけど、小さいことがきちんとしていますよね。
■ドラマの魅力とは?
2人の理想的なリーダー像と、わかりやすい魅力的な悪役、人間の弱さなど
とにかく「人間」を描いていることが共感できることではないかなと。
佃航平は、「俺は経営者に向いてないんじゃないか」とかいってますが、実際はスーパー経営者です。
とはいっても経営上のトップであり、中小企業に勤めている人や自営業やっている人には共感部分あっても、サラリーマンには他人事部分も。
その点、財前部長は中間管理職として社内のパワーポリティクスを理解しながらも、倫理観と職業人として公正な眼を失わずに仕事しているのは、すごい。
※個人的には吉川晃司はロックミュージシャンのイメージしかなかったので、イケメン部長っぷりに衝撃でした。
■経営における倫理観
とある尊敬している経営者と話した際「21世紀はethics(倫理観)が重要」といっていましたが、結構困難な決断をする際に倫理観は重要な判断軸だと思います。
倫理観として正しいことをしているからこそ、従業員はガウディ計画に集中できるわけですし、会社の結束力も高まっています。
正直、倫理観を無視しているサヤマ製作所には、社会的制裁が加わってほしい。(笑)
■今後、佃製作所に起きるであろう問題
このままいくと佃製作所は順調に成長していくのではないかと思うのですが、会社の「成長」はまた別の問題をもたらします。
特に気になるのは組織上の問題。
・従業員数が増えることによる問題。
現在従業員数は200名、すでにダンバー数(150)を越えていて、一人のリーダーで目を配らせることが非常に難しい従業員数。
現在は佃航平が影響力を非常に発揮していますが、だんだん規模が大きくなると、顔合わせたり話をすることがなくなってくると、今のような結束力、価値観を維持できるかどうかが問題になりそう。
ワークライフバランスなどあまりない企業ですから、一歩間違えるとブラック企業となりかねないですよね。
あえて成長を抑制するのか、それともより人事制度を充実させるのか、組織構造を小規模なものに分割していくのか
何かしらの組織上の課題が生まれると思います。
小さい組織だからこその強みでこれまで勝ち抜いているだけに、今後規模が成長していくとどうなるのか、興味深いですね。