0.5歩先の未来を予測することについて

久々にブログを投稿。


ビジネススクールで教えている経営学の基本的な思想の底流に、
「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残ることが出来るのは、変化できる者である。」(ダーウィンが言ったとされているが実際は不明)
があると思います。

だからこそ経営戦略は最初に外部環境分析からスタートして、自社の状況が外の環境に適応しているか、持続的に適応し続けられそうかを考えるところから始まります。
まあ当然アンマッチなところもあるわけで、その時に生き残るために「変化する」必要がでてくるわけです。

ただこの「変化する」というのはそれなりにくせ者で、それなりに時間がかかる。
今の外部環境に適応しようと一生懸命変化しようとしても、外部環境がすでに変わってるなんてことになりかねません。
したがって、「ちょっと先の未来を予測して、動いていく」必要があるわけです。

外部環境の変化をどうやって予測するか?
超能力の未来予知みたいな力があれば別ですが、100%あたる未来なんか予測することはできません。

一つの方法としては、現状のファクト(事実)と統計から考えるということ。
一例としては人口動態なんかで、日本の人口が今後どうなっていくかは、出生率や移民政策とかが変わらない限り、ある程度推測がつきます。

もう一つの方法とは、「歴史から学ぶ」ということだと思います。
歴史を学ぶ意味は下記三つ
歴史観を養う
→思考のタテ軸として、連続した時間軸の中で今自分たちがどの立ち位置にいるのか?理解すること
・世界観を養う
→思考の横軸として、世界の中で自分たちがどのような位置にいてどのように相互に影響を与え合っているのか理解すること
・人間観を養う
→人間理解として、状況が変化するなかで人とはどのような行動をするのか?理解すること

世の中がどのような動きをしていて、過去の人間がどのような動きをしていたか理解していれば、これからどう環境が変化していくか仮説が立てやすくなると思います。
最近経営戦略クラスのメンターをしていた時に、PEST分析などどうしたらいいかわからないという受講生を見ながら、ふと上記のことが思い浮かびました。


こんだけ長々と書き連ねましたが、今年読んだ書籍で将来を予測するための素晴らしい歴史関係の本に何冊かであったのでシェア。
自分の中ではメガヒットの本。

著書の中に「問い」があり、それにこたえる形で論点とそれについての解釈が語られている素晴らしい本です。

 

ユヴァル・ノア・ハラリ 「サピエンス全史」(上)(下) 文明の構造と人類の幸福 河出書房新社 2016年9月
 250万年に及ぶホモ(ヒト)属がいかに進化していったか、人は「虚構」の世界に生きていることを明らかにする本。
 認知革命、農業革命、科学革命という人類史に起きた大きなインパクトを紐ときながら、人類の成長エンジンと人類のマクロ的な動きがどう変化していくのかを明らかにしてくれてます。

 

谷口智彦 「明日を拓く現代史」 ウェッジ 2013年
 ・米国が作った世界システムとは何か?
 ・なぜ日本はそのシステムで成長できたのか?
 ・中国リスクとは何か?
 ・今後の世界はどう動くのか?
上記の問いをベースにして、どのように現代の世界がつくられ、今後どうなるのか語ってくれています。

とても衝撃を受けた本だったので、興味があればぜひご一読を
両者ともわりと現実を踏まえながら、未来に対して希望を持っているのが印象的でした。

 

ディープラーニングについて調べ、考えてみた。

1月28日のニュース以来、夜も眠れないぐらい興奮してます。

 

興奮しすぎて鼻血ぶー太郎です。
興奮しすぎて何を書いているのか、わけわからなくなるぐらい、やばいです。


あれ、やばいよ、やばいよと言い続けても、出川哲郎か!といわれるのが関の山で伝わらないので、なるべく何がやばいのかを、自分の考えを言語化して伝えたいと思います。


■歴史の1ページが刻まれた。

 

今回のGoogleのAlphaGOが囲碁のプロを破ったというのは、個人的には産業革命の始まりで「初めて蒸気機関車が走った」ぐらいの衝撃があります。

言葉にするとこんな感じ?

蒸気機関の発明により、エネルギーを力に変換して、単純労働を代替可能になりました。
今回は深層学習による人工知能により、コンピューターが経験による判断と意思決定を代替することが可能になりました。
※最初観たときにコンピューターが打ってるとは思えない棋譜でびっくりしました。

 

いやグーグルが人工知能専門の教授と教え子たちを抱え込み、DeepMindを4億ドルで買収したのもよくわかりました。
再び人類が成長の為のカギを手に入れたのではないかという思いが生まれ、正直これから世界が急速に変わっていくのを感じ、わくわくします。 

 

GoogleFacebook人工知能を開発、買収する理由とは?

 

当然ながら、囲碁の真理を解き明かすとかいう高尚な理由ではありません。(笑)

GoogleFacebookの本質は広告事業であり、そのコアとなるキーテクノロジーが、アルゴリズムであり、アルゴリズムにより蓄積された膨大なデータとそこに集まる人こそが他社の追随を許さない競争優位となります。
GoogleFacebookは、世界の情報を支配している企業といってもよく、この両社に存在していない情報は、基本的には「存在しない」扱いになります。(※他からはみえないという意味)
まあ日本はYahoo Japanが頑張ってるので、若干例外ではあるけど、中国なんかも両社を排除してバイドゥ(でしたっけ?)があるので例外ですね。

 

新しい人工知能は、両社にとって典型的な破壊的イノベーションを生み出す存在で、しかもそのポテンシャルが非常に大きい。
もし万が一どこぞのスタートアップが、新しいAIによるアルゴリズムにより、今の作り上げたバーチャルプラットフォームを脅かしたりしたら、たまったもんじゃありません。
ましてやなんでも自動化させるのは、本来Googleのお家芸。
人工知能により、検索能力を上げたり、広告表示能力を上げることは自分たちのコア事業を高めることになります。


囲碁のAI開発は、人工知能が機能するかどうか判断する絶好のテストケースになります。
絶好と思える条件は下記3つです。
①すでにビックデータと呼べる大量の打ち方のデータがある =実現可能性が高い
②過去の技術では認知と価値評価が実現不可能であったこと。
③知能の働きが視覚化されて見えること。


すでに欧州プロを打ち破ったことで、少なくとも人間の高度な熟練技能者レベルの判断などは学習による代替は可能と証明されました。
イ・セドルを破れば、膨大なデータを基に学習すれば、人間以上に正確な判断と意思決定ができるようになる可能性があるということですね。

 

■ディープラーニングとは何か?

これはGlobis知見録に素晴らしい動画がありました。
東京大学の松尾准教授による、最高の説明です。※昨年の秋の登壇のようです。
ディープラーニングとは何かというと、結論から言えば、データをもとに「何を表現すべきか」が自動的に獲得されていること、となります。
Auto-Encorderと呼ばれる回路を、多層構造で組み上げていくようです。
twitterで論文の内容の多層構造に対して、誰かが「囲碁ミルフィーユ」と突っ込んでいたのが印象的でした(笑)

図は論文にあるネットワーク構造です。

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(下記動画は必見です)

人工知能の未来~ディープラーニングの先にあるもの Part1/2 ~東京大学・松尾豊氏~
https://www.youtube.com/watch?v=GbmKWY7SLng

人工知能の未来~ディープラーニングの先にあるもの Part2/2 ~質疑応答
https://www.youtube.com/watch?v=53fsWd5o2fk&spfreload=10

 


■ディープラーニングの学習可能条件とは?

 

2012年から第3次人工知能ブームが来たようですが、それには環境変化によるところが大きそうです。
ムーアの法則で演算処理能力がおおきくなったこと
②ITが活用されてから時間がたち、ビックデータといえるだけの情報の蓄積ができていたこと。

今回は上記に加え、優れた技術者と資金力がディープラーニングの構成を組むには必要そうですが、Googleはすべて条件を満たしていました。
※しかし昨年にグーグルは、画像認識で人間を越えるものを創り出してしまっていたんですね。。

 

■一口に人工知能(AI)といっても同じではない。

 

今まで人工知能というと、結構まるっと同じように考えてしまいがちでしたが、クリステンセンのイノベーションのジレンマ風に
①持続的イノベーション人工知能(S)
②破壊的イノベーション人工知能(D)
に分けるのは非常に面白いなと思いました。(※動画参照)

意外とプログラムやっている人でも、ディープラーニングのことはわからないという人は多そう。
SNSなどの反応みた印象ですが。

 


■一方、あまり過大評価しない方がという声も

 

AlphaGoが誇大広告ぎみな件
http://aleag.cocolog-nifty.com/blog/2016/01/alphago-21ae.html

上記は多少今回の話とは論点ずれますが、AIの進化のジャンプはそこまでではないという意見ですね。
(※囲碁の強さだけに限ればということですが。内容はだいぶ違うとは思います)

 


■人類の未来はどう変わる?

 

最初このニュースを見て起きている出来事を理解したとき、人工知能は、①演算処理→②学習による知覚→③感情理解による共感へと進むのかな?と勝手に思いましたが、どうもそうではなさそうですね。
心のある人工知能、ロマンがあるんですがね。
松尾教授は生命と生存本能の結びつきから心の部分が発達しないだろうという見解をだされていて結構納得しました。

自動運転やロボットなどは、急速に現実味帯びてきます。
人間以上に安全かつ正確に運転したり、熟練工以上の精度でロボットが疲れを知らずに作業が可能になったり。
そういやグーグルっていっぱいロボット会社も買収してますね。
http://svjapan.blogspot.jp/2014/02/google1514326800.html

コマツとかは、ビックデータをうまく活用しているので、AIと相性よさそう。

一回作ってしまえば、少ない容量で稼働させることができるみたいなので、成長率高そうです。

パソコンや携帯電話の普及と同じで、状況によっては一気に世界が変わりそう。

すごい時代に生まれたなぁ

Google DeepMindの衝撃、コンピューターが人間に勝利する価値。

2016年1月28日、囲碁界だけでなくコンピュータープログラム業界や神経科学界にも衝撃が走った日だと思います。
これまでコンピューターが人間に勝つのは困難とされていた最後の砦でである囲碁で、欧州のプロがGoogle DeepMind社開発のプログラムAlphaGoにハンディキャップなしで5戦全敗したからです。
棋譜を5局ともみましたが、私個人はコンピューターにぶっちぎられてしまった感満載です。
もう絶対かなわない(笑)

 

下記記事

ついにコンピューターが囲碁でプロ棋士に勝利、倒したのはGoogle人工知能技術
http://gigazine.net/news/20160128-computer-win-human-at-igo/

Google DeepMind AlphaGo
http://deepmind.com/alpha-go.html

グーグルが最新人工知能使い囲碁ソフト開発 プロに勝利
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160128/k10010388481000.html

AlphaGo: マシンラーニングで囲碁
http://googlejapan.blogspot.jp/2016/01/alphago.html


■プログラムが人間に囲碁で勝つこと自体は意味はない、されどその勝利の意味はとてつもない。

いきなり矛盾した表題になってしまいましたが、今の心境はこんな感じです。
正直、プロ棋士人工知能に負けたところで、本当の意味で誰かが困るわけじゃないでしょう。(何かしらで競合している人は別として)
囲碁知らない人からは、「へえ、そうなんだ」くらいのもんでしょうし、囲碁に自信があるひとは心情的になんかやるせないぐらいのもの。
走りのスピードで、人間がF1マシンに負けても、当然というものと一緒だと思います。

一方でこのプログラムがプロレベルの人間に囲碁で勝つということの偉業についてなんかいまいち理解されない感じがもやもやして、ちょっとブログを書きたくなりました。
特に下記2点について考えていきたいと思います。

囲碁というゲームのプログラムにおける困難さ
②強化学習(Reinforcementlearning)というブレイクスルーがもたらす汎用性と価値


囲碁の意思決定の思考プロセスとは?

囲碁の意思決定プロセスを図にするとこのようなものと私は考えています。
※昔囲碁の思考プロセスについてビジネススクールで質問をいただき作成した図です。

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この図でいうところの「読み」にあたる部分が、コンピューターが人間に対して優位なところで、ツリー検索による演算処理能力が必要なところです。
一方、直観と大局観については、感覚要素が大きく、コンピューターには真似できないと考えられていました。


■これまで囲碁を難攻不落にしていた難所とは?

・演算処理するには場合の数が多すぎること
あまりにも場合の数が多すぎて全ての手に対して、演算処理をするわけにはいきません。
人間は経験による「感覚」によって、不要な着手を考えないようにしていますが、感覚のないコンピューターはそうはいきません。
※チェスなどは、その点場合の数が囲碁に比べて少ないので、スーパーコンピューターによる強引な検索が可能でした。

・局面の評価が難しい。(評価関数をどう設定するか困難)
そもそも途中でどちらが良いのか、これまでは感覚処理を行っており、評価関数と設定するのが困難でした。

囲碁の歴史は、一説には4000年とも言われ、中国最古の歴史書にも登場しています。
囲碁のプロ棋士は、膨大な経験によって身に着けた常人からは考えられないような「感覚」と「ヨミ」で、囲碁において精度の高い着手を打っています。
コンピューターの処理能力があがってきたことで、ある程度強引に演算処理で検索(モンテカルロ・シュミレーション)して、近年は強くなっていましたが、プロには到底及ぶレベルではありませんでした。

 

Google DeepMindがもたらしたブレイクスルーの意味とは?

今回、Google DeepMindは強化学習というブレイクスルーによってプロを破るプログラムを作成しました。
といっても強化学習という考え方自体は、ずいぶん昔からあったみたいですけど。(人間の脳もドーパミンを介した強化学習を行う神経回路という話みたいですし)

今までのプログラムは、演算処理の能力の高さに頼っただけとすると、今回のプログラムは従来のモンテカルロ木検索はそのままに、policy networkとvalue networkという二つの手法で次の手を予測して、さらに自己対戦を繰り返してもっとも勝率の高い手を学んでいくスタイルみたいです。
早い話人間みたいに、経験から学んでいくことで、感覚に近い評価をできるようにしていると思えます。

囲碁自体は単なるゲームにすぎませんが、非常に難易度の高いハードルが存在している中、deeplearningが機能することを証明したことには、意味があると思います。


■強化学習がもたらす価値

Google(正確には買収したDeepMind社)の開発したAIの強化学習が示す価値というのを言葉になおすと下記のようになるのかなと思いました。

「経験がものをいう領域において、十分なデジタル情報の蓄積がある場合は、強化学習のAIによる代替が可能となる」

十分なデジタル情報の蓄積がある場合は、と置いたのは、今回に関する昨日発表されたNatureの論文をちらっと見たときに、KGS GOサーバーからの対局の蓄積された情報による寄与が大きいとわかったからです。
※昨日発表のNatureの論文は、これからちゃんと読もうと思いますが、英文であることとかなり専門的な内容であることから、是非プログラミングの専門家の発表を待ちたいところです。

気候予測も疾病分析も一応は上記定義にあてはまるのかなというような気はします。

他にも使い道ありそうですけど


facebookとの比較

facebookの研究が今どうなっているのか、まだ具体的にはわかりませんが、27日にマーク・ザッカーバーグ(facebookCEO)が自らのfacebookに上げた囲碁ソフトの棋譜をみる限りでは、かなり弱い印象でした。
現在視覚からのパターン認識から可能性を探っているという話なので、応用する着地点が違うのかもしれません。
※顔認識の精度を高めるなど、視覚パターンが応用される分野など

(参考)Google and Facebook Race to Solve the Ancient Game of Go With AI
http://www.wired.com/2015/12/google-and-facebook-race-to-solve-the-ancient-game-of-go/
ついに人工知能囲碁で人間に勝つ? フェイスブックが開発中
http://www.gizmodo.jp/2015/11/aifacebookgo.html


■100万ドルの対局が楽しみ

Googleは近年で最も実績を残した世界最強の棋士の一人、イ・セドル九段と3月に対局を組んでいるとのこと。
賞金はなんと100万ドル。
http://nitro15.ldblog.jp/archives/46676784.html

イセドル自体、人間離れした超人みたいな碁を打つので、どっちが勝つか全くわからないのですが、本当に楽しみです。
歴史上でもイ・セドル程強い棋士はそうそうはいないと思いますし、人間の能力の限界点近くまで来てる人だと思ってますから。
人類史に新たな1ページが刻まれるのか、結果が楽しみです。

下町ロケットを経営学の視点からみてみた②

佃製作所代表取締役社長の佃航平は、戸惑いながらも悩んでいた。
株式会社帝国重工の宇宙開発事業部長の財前が突如佃航平のもとを訪れ、佃製作所の持つ水素エンジンバルブに関する特許を20億円で買い取りする要望を伝えられたからである。
佃製作所を取り巻く環境は決して容易なものではなかった。
佃製作所は従業員200名、資本金3000万、年商100億に満たない精密機器製造メーカーである。
つい先日佃製作所は最大の取引先京浜マシナリーから、エンジン部品の調達をいきなり打ち切られたばかりである。
さらにはメーンバンクの白水銀行から、研究開発費に費用をかけすぎていることを理由に追加融資を断られている。
エンジン部品を製造する大手競合先ナカシマ工業からは、自社の主力商品ステラエンジンに関する特許侵害で訴えられ、90億円の支払いを要求されていた。
ナカシマ工業からは和解案として51%の株式譲渡を打診されている、困難状況下である。
現在ナカシマ工業を逆に自社の特許を侵害しているとして、逆訴訟を同時に行っていて賠償金を要求して、審議を争っている。
佃航平は、帝国重工財前からの要望に対して、どのように答えたらよいのだろうか。
回答に時間を1週間もらったものの、決断に時間は多くかける余裕はなかった。

 


下町ロケット経営学のケースにしたらこんな感じの始まりでケーススタディになるのでしょう。
下町ロケット全10回を通して、経営上の一番の決断のジレンマが生まれるのは、第1回~第2回にかけてです。

 

■経営上のイシュー

当初選択肢としては、下記2点
①帝国重工に売却する。
②特許使用許諾契約として、使用料を払うことを飲んでもらう。

考えるイシューは下記のようなものになってくるでしょう。


・いつ資金はショートするのか?
これはアカウンティング(会計)の領域。これまでの財務諸表と経営戦略、マーケティングを基に月次で予測損益を出して、必要な運転資本を算出。
この辺は物語では経理部長の殿村さんが手腕を発揮してますね。


・どうやって資金調達をするのか?
知財裁判の賠償金獲得、帝国重工の特許交渉、借入余力など精査しての追加融資もしくは社債発行、エンジェル、ベンチャーキャピタルなど幅広く検討してよいけど、
実際考えられる金融機関、投資家、投資会社とすべて交渉をしているみたいですが、断られています。
※VCはイグジットのことを考えるとどうかと思うのと、個人投資家は額が大きい為大変そうですけど。
メーンバンクの白水銀行へは、研究開発費の削減を決断しPLの構造を変えて融資を依頼してます。これも断られて、結局裁判か帝国重工との交渉かというとこにいきついています。


・水素エンジンバルブの特許の価値は?
 ‐帝国重工への妥当な売却額は?
 ‐特許使用許可契約にした場合の価値はどうか?
このへんはファイナンスとネゴシエーションの領域ですが、どれだけ合理的な価値判断ができるかということと、2社の交渉力を検討することになります。

 

■佃航平の決断は「非合理の理」?
一橋大学経営大学院の楠木教授は持続的競争優位を築いた企業には、一見して非常識だがよくよく見ると合理的な「非合理の理」というべきことを実行していると言われています。
佃航平は、帝国重工の申し出に対して、突如第三の選択肢「部品供給をしたい」と申し出ています。

もし裁判に勝って和解金56億円が入ってくることがなかったら、この決断は絶対にでてこなかったでしょう。資金がなくなっちゃいますから。
※申し出が来たのは裁判結審前、供給申し出は結審後。


経営危機を乗り越えて、あとは売却か使用契約かどっちが得かということを合理的に決めそうですが、佃は第三の選択肢を提示します。
この辺はドラマとして見せ方も巧い。
一見すると、ロケット失敗の際は訴えられる可能性もあるし、収入面では2つの選択肢に遠く及ばない非合理な選択肢だとは思うのですが、もう一段レイヤーを上げていくと理のある決断だとわかります。

この決断があって前回ブログで分析したように組織の7Sが強化されていくことになります。
ロケット製造の品質への挑戦と帝国重工のキャラの立ってる詰めが、佃製作所社員たちのプライドを刺激して、団結力と自社への愛着を高めていくことになるからです。

結果として組織は強化され、ロケットを納品しているという企業ということで、ブランドと信用を獲得してKSFを満たしていくことになります。


■決断の底流にあるものとは?
単純に表面上の合理的な話だけでは、第三の選択肢「部品供給」については出てこなかったかもしれません。
なぜ佃航平は、部品供給をしたいと言ったのか?
それは彼が歩んできた経歴と価値観が強く影響をしているものと思われます。

氷山モデルで表すとこんな感じでしょうか。

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■最高のシナリオは結果論?
56億のキャッシュが入るというラッキーがなかったら、この決断はやってはいけない決断となるでしょう。
特許売却すれば経営危機は一気に解決するのですから、資金の見通しがつかない状況だと売却もしくは使用契約するしかなかったと思われます。
※額は精査して交渉するべきでしょうが。
ただそうなると感動の物語にはならず、良い会社のまま存続となるだけです。

今回は佃航平のこだわりにより、帝国重工への返答を遅らせその間に資金の見通しがつき、よりハイリスクだが会社のDNAを強くする決断を行えたことになります。
ついついこんな危機を迎えると視野が狭くなりそうですが、佃航平は自分の判断を鈍らせませんでした。

心からの価値観に基づいた決断は、成功確度を高めるということですかね~。
経営はお金だけの話じゃない。

ただ価値観だけの問題じゃなく、社員たちが奮起できたのは、佃と社員との間の積み上げた日ごろの信頼関係があってこそでした。
このシナリオになったのは、人間性の勝利ということで

下町ロケットを経営学の視点からみてみた。

TBSのドラマ「下町ロケット」、本日が最終回ということ。
裏番組のクラブワールドカップ決勝 バルサ×リーベル戦とかぶるのが残念。

楽しみです。

下町ロケットをわりと経営学ケーススタディのように観ていたので、思ったことをだだっとまとめてみました。

ドラマ見てない方はネタバレ注意。


■佃製作所の危機とは

佃製作所には様々な障害がドラマ上で展開されますが、真実これはやばいというのはやはり第1回~第2回の資金繰り問題でしょう。
会社は資金が尽きたら、ゲームセットです。
神谷弁護士は、本当に救いの「神」になっています。
最大の取引先(年商10億)を失う+ナカシマ工業からの知財訴訟によって、運転資金が足りなくなる上、銀行から融資を断られるという事態でした。
これを訴訟によって和解金56億を得るだけでなく、佃製作所の知財戦略を見直しさせることで、戦略上の弱点を補うことになりました。

■佃製作所の強みとは何か?

ドラマ見ながら感心してしまいますが、佃製作所はすごい企業だと思います。
整理すると下記のような感じでしょうか

・戦略:技術開発による差別化集中戦略。
※たぶん佃航平は経営を引き継いで、経営の戦略を転換させている節があります。
その根拠は、佃製作所の事業部構造と、構成される従業員の年齢層のばらつき。
山崎率いる技術開発部は全員がめちゃくちゃ若い。佃航平時代に全員採用された人たちでしょう。
一方年齢層が高いのは営業第一部長や、生産部門の人たち。
おそらく前は下請けとして普通に受注生産するだけのモデルだったのではないかと思います。

・財務、会計:「我々の出す数字は正しい。いい時はいい時なりに、悪い時は悪い時なりに会社の実態を反映させている」
東芝へのあてつけか!?と勘ぐってしまいそうなセリフ。
たった一日で要求される大量の情報を帝国重工に提示するシーンがありますが、これは日々経営を行いながら、きちんと数字を取る仕組みがあるということ。
ちゃんとKPIなど設定しているのでしょう。
資本金は3000万ということですが、簿価上の話。自己資本比率も厚いということなので、かなり利益剰余金を積み上げてきているようです。
※膨大な固定資産(土地、建物、機械設備)を考えると、総資産額はそれなりでしょうし。
実際このビジネスモデルではハイリスクな財務は取りづらいので、デットファイナンス(借入)は最低限に抑えているのでしょう。

・組織:戦略を実現する「組織」にこそ真の強みあり。
佃製作所の競争優位性とは他社からも認められる圧倒的な技術、この技術を生み出すのは「人」と「組織」です。
組織の構成要素7Sでみるとざっくりこんなところ。

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技術を生み出すのはヒトと企業文化、これの源泉は佃航平のリーダーシップなので、ナカシマ工業が51%の佃製作所の株式を仮に取得できたとしても、佃航平がいなくては同じレベルで新しい技術を生み出していくのは難しかったと思います。
挨拶をする文化、成功をみんなで喜ぶ(自分事と捉える)、賞賛する文化、きっちりと5Sが守られている、組織の価値観が明文化されている(技術、誠実、品質など垂れ幕)、
神は細部に宿るじゃないけど、小さいことがきちんとしていますよね。


■ドラマの魅力とは?
2人の理想的なリーダー像と、わかりやすい魅力的な悪役、人間の弱さなど
とにかく「人間」を描いていることが共感できることではないかなと。

佃航平は、「俺は経営者に向いてないんじゃないか」とかいってますが、実際はスーパー経営者です。
とはいっても経営上のトップであり、中小企業に勤めている人や自営業やっている人には共感部分あっても、サラリーマンには他人事部分も。
その点、財前部長は中間管理職として社内のパワーポリティクスを理解しながらも、倫理観と職業人として公正な眼を失わずに仕事しているのは、すごい。
※個人的には吉川晃司はロックミュージシャンのイメージしかなかったので、イケメン部長っぷりに衝撃でした。

 

■経営における倫理観
とある尊敬している経営者と話した際「21世紀はethics(倫理観)が重要」といっていましたが、結構困難な決断をする際に倫理観は重要な判断軸だと思います。
倫理観として正しいことをしているからこそ、従業員はガウディ計画に集中できるわけですし、会社の結束力も高まっています。
正直、倫理観を無視しているサヤマ製作所には、社会的制裁が加わってほしい。(笑)


■今後、佃製作所に起きるであろう問題

このままいくと佃製作所は順調に成長していくのではないかと思うのですが、会社の「成長」はまた別の問題をもたらします。
特に気になるのは組織上の問題。

・従業員数が増えることによる問題。
現在従業員数は200名、すでにダンバー数(150)を越えていて、一人のリーダーで目を配らせることが非常に難しい従業員数。
現在は佃航平が影響力を非常に発揮していますが、だんだん規模が大きくなると、顔合わせたり話をすることがなくなってくると、今のような結束力、価値観を維持できるかどうかが問題になりそう。
ワークライフバランスなどあまりない企業ですから、一歩間違えるとブラック企業となりかねないですよね。
あえて成長を抑制するのか、それともより人事制度を充実させるのか、組織構造を小規模なものに分割していくのか
何かしらの組織上の課題が生まれると思います。
小さい組織だからこその強みでこれまで勝ち抜いているだけに、今後規模が成長していくとどうなるのか、興味深いですね。

ロジカルシンキング考  ~ざっくりロジカルシンキングについて考え、まとめてみた~

ロジカルシンキング考 
~ざっくりロジカルシンキングについて考え、まとめてみた~

ちょっと苦手(?)というか、自分でも整理ができていない部分があったので、自分の理解を再整理する意味でまとめてみました。
あくまで自分にとっての解釈や整理も多いので、もし学びたい方は原書など読んで学ばれることをお勧めします。


ロジカルシンキングとは何か?

文字通り「論理的な思考」を指すと思っています。
(言い換えただけで、定義も何もないビックワードじゃねーかと思った方、クリティカルシンキングのやりすぎですw)

思考法であり、テクニックであるのだけど、訓練しないとできないスキル(技能)でもあるかなと。
本質的には、問題解決およびそのための意思決定のためにあると思っています。

マッキンゼー・アンド・カンパニーの中で使われているものが、書籍などで公開されたことになり、ビジネスマンの中でブームとなって広がったものらしいです。
実際、今までロジカルシンキングで参考にした書籍の多くは、マッキンゼー出身の方が書かれています。

マッキンゼー出身のライターが書いた著書
照屋華子・岡田恵子「ロジカル・シンキング 論理的な思考と構成のスキル」東洋経済新報社 2001初版
照屋華子「ロジカル・ライティング 論理的にわかりやすく書くスキル」東洋経済新報社 2006
安宅和人「イシューからはじめよ 知的生産のシンプルな本質」英治出版 2010
バーバラ・ミント 山崎康司(翻訳)グロービス・マネジメント・インスティテュート 「考える技術・書く技術 問題解決力を伸ばすピラミッド原則」ダイヤモンド社1999

グロービス経営大学院系の著書
グロービス 嶋田毅「実況 ロジカルシンキング教室」 PHP研究所 2011 
齋藤嘉則 株式会社グロービス「問題解決プロフェッショナル 思考と技術」ダイヤモンド社 1997
(※齋藤さんもマッキンゼー出身)
グロービス・マネジメント・インスティテュート「新版 MBAクリティカル・シンキングダイヤモンド社 2005


ロジカルシンキングが求められている時代背景とは?

2000年代より、ブームになったということですが、ブームになったからにはその求められている時代背景があったんではないかなと思いました。
理由の一つとして思いつくのは、バブル崩壊後国内市場の限界があり、グローバル化が必要になってくる時代だということ。
日本国内だけでやっていくうえでは、実はそこまで重要視されないのではないか。
日本国内だと同じ文化、阿吽の呼吸のような、空気を読むコミュニケーションが多い。
異なる背景の中コミュニケーションを行うには、かなり細かく言語化して論理構成されたコミュニケーションが必要になってくること。
もう一つ思いつくのは、国内経済の成長がとまったことにより、これまで以上に課題解決能力が求められていたこともあると思います。


■論理的とはどういうこと?

論理的であると認められるためには次のような条件を満たす必要があると僕は思っています。

①問いに対する結論が明確であること。
②結論の根拠が過不足なく示されていること。
③結論と根拠の間に因果関係が認められること。
(※根拠はファクトをベースにしていることが前提)

一般的に「論理的」と思われている人は、主張と理由がワンセットで出ている人がそう思われることが多いように思えます。
だけどそれだけでは本当の意味では論理的だとはいえません。

あまり意識されていないけど、論理には必ず「問い」(課題)がつきまとっています。
それが明示されているかどうかは別にして。

論理的でないと感じる時は、3つの条件のどこかに問題があります。
①に問題があるときは、話し手は思ったことをただしゃべってたりするだけで「論点」がずれている状態。
いわゆる「イシューずれ」とか言われて、問題を認識していないと思われたりする。
②に問題があるときは、一部の論点だけ話つづけている状態。
思考に抜けがあり、聞き手からは全体感がない話に感じられる。
③因果関係がわからないと、論理が飛躍しているように感じられ、聞き手には脈絡がわからない話と感じられる。

論理はピラミッド構造で表すことができます。

 

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■問いとは?
論理的であることを満たすためには、まず「問い」(イシューと呼ばれる)が必要だということは先述したとおり。
ただし問いをどうやって立てるのかという疑問があります。
多くの場合は主体者(問いをたてる人、意思決定する人)の問題意識・課題意識から生まれるものだと思っています。
昔学友に「イシューは天から降ってくる」などと言って笑われましたが、問題や課題がなければイシューとなる問いは存在しないのだと思います。

Yahooの安宅さんの「イシューからはじめよ」にある、「よいイシューの3条件」とは次のようなものです。
①本質的であること
②深い仮説があること
③答えが出せること

言い換えると、3条件は次のようになるのではないかと。
①意思決定に影響すること
②解が一般的に出ていないと思われるもの
③答えが出せると思われること。(検証可能であること)

これはどういうことかというと「意味のあることを考え、無駄なものは考えない」ということ。
①のように、考えた結果、行動や方針が変わるものでないと、哲学者になってしまう。
②のように、すでに答えがわかっていると思っていることは、無理に考えない。
③のように、答えが出せないこと、今の段階では考えてもしょうがないことは、考えない。その時間が無駄になります。


■問いを深める技法

初期段階では3条件が判断できないことが多いです。
以下のアクションをとって問いの精度を高めていくことで、答えを出せるかどうかを判断できるようになります。
・言葉の定義をはっきりさせる。
・前提条件を明確にする。
※what(何を)、where(どこで)、when(いつ)、who、why、howを明確にする
・WHYを繰り返す。

※イシューにおける問いはWHY(なぜ?)にはしない。
whyにしてしまうと具体的なアクションにはつながりにくいから。
学術的な研究であればよいのかもしれないが、ビジネスでは理由が知りたいのではない。
解決策(Howによる結論)であったり、その前段階のwhat(何をするか?)、where(どこに注力するか?)などがベースになる。

そういう意味では問いは問題解決を進めていくと最終的にはHowになるのではないかと思う。
what(問題とは何か)→where(問題はどこにあるのか?)→why(なぜその問題は起きている?)→how(問題の解決策とは?)


■過不足ない根拠のためのMECE

分解の技法として、よくいわれているのがMECE(mutually exclusive and collectively exhaustive 相互に重なりなく、全体として漏れがない)
「目的」をおさえて、必要な全体集合とその要素を洗い出すこと。(要素分解)

全体を押さえ、抜け漏れをなくして分解することで、比較して優先順位をつけたり意味合いをだすことが可能になってきます。
まずは分解すべき全体集合をどうやって捉えるか。

(適切な枠組み・論点を見つけていく)
①イシューからトップダウンで分解して考えていく
・構成を考える。(何かしらの構成要素軸で切り分ける)
・変化(時間軸、プロセス)を考える。
・物事の両面で2つに分けて考える。

ここでトップダウンの分解がうまくいかない場合、「問いを深める」作業が足りない可能性は高い。問いが具体的になっていないといえます。

②事実から考える。ボトムアップで分類して考えていく。
・ファクトからグルーピングを行う。
共通項を分類していくことで、実際のデータから要素を洗い出していく。

この②のアプローチがうまくいく場合は、結構多くのデータやファクトが揃っている場合。問題解決の初期段階では、データなどないため、このアプローチはとれないことも多いが、ある程度仮説検証をまわした段階だったら、エビデンスベースで考えていくことで、適切な論点になっていくこともあります。

(既存にある枠組みを活用する)
・イシューや目的に適合するフレームワークの活用
既存のMECEとなる枠組みを活用する。
目的に対して適切な既存のフレームワークがあるのであれば、フレームワークを活用して考えてしまったほうが時間短縮になります。


■論理構造を成立させるための、2つの方法

主張を支える根拠を示す構造を、論理構造とすると、その構造を成立させるための方法は基本的に2つしかありません。

演繹法
事実を一般的な法則に照らし合わせて、結論を導き出す方法。
演繹法の落とし穴
・本当に一般的な法則か?ということは考えたほうがよい。

帰納法
複数の事実の共通項から、結論を導き出す方法。

上記のどちらかのアプローチを使って、論理の下部構造を支えることになります。

演繹法は、いってみれば事実と共通認識となりうる判断基準を提示して、主張となる結論を示す方法で、帰納法は複数の事実から統合して言えることを主張する方法といったところでしょうか?


■因果関係について考える。

論理的に考える、主張するためには、物事の因果関係を正しくとらえる必要が出てきます。

私はAすべきだと思います。なぜならB、C、Dだからですという主張があったとしたとき、なぜならの部分がきちんとつながっているか捉える必要があるからです。

ではどうやって因果関係をとらえるか?

・因果関係はインプット‐アウトプットで分類して整理すると理解しやすい。
インプットとは、コントロール可能な指標、原因
アウトプットとは、結果指標であり、直接コントロールができないもの

・因果関係を可視化する。
実際の事柄、インプット、アウトプットについて矢印(→)を引いていき図式化していくことで、物事の因果関係の流れを整理して、つながりを把握する。

・ロジックツリーを考えてみる。
分解して変数を考えてみる。

・因果関係を考える上での落とし穴
相関関係があることと、因果関係は分けて考える。(第三因子など、実は別の要因が働いていることは十分考えられる)
原因と結果を取り違えない。(→が逆)
原因となる要素のうち、たまたま目に留まった要素を重要視してしまう。


■事実と何か?

論理思考は事実をベースに考えますが、この「事実」を捉えることもそう簡単なことではありません。

事実なのか、解釈(思い込み)なのか、結構混同して捉えている人も多いです。

・事実と解釈の違いを明確にする。
「A社は1996年に目標管理制度を変更した結果、従業員の士気はあがり利益は上昇した。」という記事があったとすると、おそらく目標管理制度が変更されたこと、利益が上昇したことはファクトの裏付けが取れることですが、従業員の士気があがったこと、制度と士気と利益の上昇の中の因果関係は検証が難しく、ここは解釈の世界になると思います。

・感情や価値観に引きずられない「事実」の認識とは?
(例)→中二の時になるほどと思った小説「ロードス島戦記」の賢者スレインの考え方
「性格の悪い女性がいても、美人であることは認めなさい。」
・真実と事実を混同しない。

真実などというと実は解釈が入ってしまっています。物事をありのままにみることが大切。
人間は認知する際に、ついつい感情や価値観のフィルターを通して見てしまうことが多い。

・事実の確からしさを評価する。
一次情報と二次情報、生データと加工データなど、情報のリソースによる区分

・ファクトとは料理の素材みたいなもの
Garbage in , Garbage out (ゴミのようなデータをいれても、ゴミしか得られない)
目的に合わせたデータを収集すること、データの背景を捉えておくこと。

 

適切な「事実」に基づいて結論を導き出さないと、かなりずれた結論になりかねません。「事実の見極め」とは料理の素材選び、目利きのようなものかと思います。


■分析とは「比較」の技法。

分析とは「事実を比較して意味合いを抽出すること」だといえます。先ほどの事実の見極めが素材の目利きとすると、分析とは素材の適切な調理法といえるかもしれません。
気を付けておきたいことは下記。

Apple to Apple(比較可能なものをフェアに比較する)
分析に必要な要素が同じ前提条件にあるものなのかどうか、おさえておく。

・分析の軸を明確にする。
必要な結果(検証)が生まれる軸がどうか?
何を比較すれは、結論が出せるかを考えて、必要な軸を選ぶ。

あくまで「問題となる問い」がベースで、判断や結論のために何を比較するべきかが重要です。


■論理思考を身に着けるとクリエイティブになれるか?

これは疑問。条件付きイエス。
クリエイティブをどう定義するかによって違ってくる。

論理思考の本質は問題解決のための思考であって、アイデアを生むための思考法ではない。
イデアを生むか?といわれたら、NOと答える。
本質的にアイデアとは組み合わせによる飛躍だと思ってる。
思考の抜け漏れを発見できる、制約条件を明確にできるなど、アイデアを現実化させることはできる。
思考を現実化することが「創造的」だとするならイエスだよね。


■コミュニケーションにおけるロジカルシンキングの役割

ロジカルシンキングは、「理解」のためには役立つが「共感」には役立たない。
意思決定のためのコミュニケーションには、ロジカルシンキングは役立つ。
感情の共有のためのコミュニケーションには寧ろ有害となるシーンも多い。

わかりやすい例としては、男女間のコミュニケーション。
男は「理解」脳、女は「共感」脳だと聞きますが、男女の「わかってほしい」はかなり意味合いが違います。

男の「わかってほしい」は、自分の置かれている状況を理解してくれた上で、解決策を提示するなり、慰めてほしいだったりですが、女性の「わかってほしい」は自分のおかれている状況と同じように感じて、一緒の気持ちになってほしい感覚のように思えます。

なので夫婦間のコミュニケーションでロジカルシンキングは「使うな、キケン」と思われます。※使おうとする勇者が時々現れるので、注意。
よい例としてはソクラテス
ソクラテスの奥様クサンティッペは悪妻として名前が残っているが、悪妻にしたのはソクラテスといえなくもないような気も。
哲学者になるために結婚するとかはごめんだけど。。


ロジカルシンキングの限界

ロジカルシンキングをできるようにしようと思う人、あるいはちょっとかじった時は、これを使えば何でもできるような錯覚を覚えるかもしれません。当たり前のことですが、限界もあり、注意事項も。

・僕らはロジックの世界に生きていない。
多くは感情の世界に生きていて、感情によって意思決定をしている。
だから自分も他者もロジック通りに意思決定するわけではない。

・人間の認知には限界がある。
したがってロジカルシンキングで得られる結論とは、正しい結論ではなくて、現在の知りうる情報の中から導き出されるより妥当な結論。
自分が正しいと思い込んでると痛い目みちゃいます。

・時には考える前に行動も必要
時間はもっとも重要なリソース。行動してみたほうが早かったり、する場合も多い。
その場合はざっくり仮説が立つなら実際に行動してみて、その結果で判断したほうが効率が良い場合も多い。


ロジカルシンキングの価値

それでもロジカルシンキングには価値があると思います。
自分が思うロジカルシンキングの価値とは下記。

・異なる前提条件にいる間柄でも、整理したうえでわかりやすい説明が可能になる。
・自分自身の思考の抜けが少なくなり、迷いのない意思決定がしやすい。
・十分な思考があるため、現実で仮にうまくいかなかったとしても、失敗の要因が特定しやすく、改善策も打ちやすい。

 

■できるようになるためには?

もうこれはひたすら「実践」あるのみ。

日々の仕事や生活の中で、使い続けることで「思考の癖」をつけていくことが、ロジカルシンキングをできるようにする唯一の道のように思います。

 

長文になりましたが、備忘と日々丁寧に考える習慣をつけていこうと、自戒を込めて

碁会所ビジネスを経済的な側面から考えてみる

 

今回は具体的に碁会所ビジネスの事業としての経済性から考えていきたいと思います。

結論からいうと、「稼働率の向上なくして利益なし」
ということになるかと思います。

んなもん当たり前だろ!といわれそう(笑)

 

碁会所の売上、コストを推定をもとに前提条件を組んでおいてみると、図のようになります。
※念のために言っておくと、実在はしません。極めて単純化した想定です。

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固定費型のビジネスで、頑張って損益分岐点超えればハッピーということですが、一応こういうことを押さえておかないと収益につながらない無駄な努力をするということになりかねません。
ex.いの一番に当社では頑張って電気代の削減に努めています、とか ※決して電気代の削減自体を100%無駄と言っているわけではありません。

またここが想定ができることで、初めて具体的な目標の売上高であったり、必要なマーケティング施策の数字を出すことが可能になります。
ex.最低限何人来てもらわないと黒字化しないとか、必要な回転率だったり、碁会所が事業として成り立つ商圏や立地条件、広告を出すうえで許容できる顧客獲得単など

当然、碁会所を始める人にとっては必要な資金繰りも、スプレッドシートを使って財務モデルを組むことで、イニシャルコストとランニングコスト、それに月々の売上高予測と黒字化までの期間が想定できれば、必要な資金調達額が出せます。


今回すごく簡単な推定でコスト構造を出しましたが、果たしてどれだけの碁会所が損益分岐点を超えているのでしょうね?
運転資本がほとんどかからない日銭商売の為、本来つぶれにくいビジネスではありますが、実感値として黒字化に必要な稼働率をキープできている碁会所は少ないような気がします。
まあ会社をリタイアした後年金暮らしで、家賃分の固定費とその他変動費など稼げばいいという方もいらっしゃいそうですが。